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【観劇記録】タイムリピート~永遠に君を思う~

 演劇女子部さんの「タイムリピート~永遠に君を思う~」がU-NEXTの配信に追加されていたので観ました!演劇女子部…と言いつつも、「Juice=Juice」主演の舞台は初視聴。

 ジャンルがSFと聞いたとき、「続・11人いる!」「トライアングル」を観た身としては心の隅っこで「またSFかぁ…内容被ってそうだなあ」と思っていたのですがめちゃくちゃ面白かったです(毎回言ってる)
 タイトルの通り「タイムリピート(=リープ、時間跳躍)」を軸としているのもあり、3作の中で一番がっちりSF感がありました(無論11人とトライアングルは設定含めてあのそこはかとないファンタジー感が良いわけですが!)。

 一つの舞台として綺麗にまとまっていて、筋書きもわかりやすく良い意味でストレート。伏線の拾い上げと回収もしっかり楽しめ、展開もドラマティック!な、個人的には初見さんに勧めたい(いや私もにわかですか)作品!です!

あらすじ
宇宙歴3255年。
銀河連邦とロア帝国は30年にわたり、冷戦状態となっていた。
銀河連邦の宇宙船・乗組員総勢13名を乗せたエスペランサ号は、希少エネルギー・ネオクリスタルが眠る惑星を発見。着陸準備に入ったところ、突如、小惑星のような謎の天体が現れ、衝突により大破してしまう…
ところが、乗組員の鉱物学者・ルナは再び目を覚ます。気づけばそこは、大破する前のエスペランサ号内部だった。永遠に繰り返される時間の中で、やがて一つの真実が明らかになる。

 主人公・ルナは、過去の経験から他人に心を許せず、全てのクルーに対して常に刺々しい態度で接してしまう女性(少女)。寄らば斬ると言わんばかりのツンツンっぷりが死の恐怖で崩れ、繊細で臆病な面が覗くようになっていく様が愛おしいです。
 もう1人の主人公でソーマは、いかにも「研究オタク」感の漂う宇宙学者。早口で時にどもる口調、そして見るからにへたれ。でも誰よりも心優しく、研究熱心で好奇心旺盛な青年です。
 2人を中心に時間跳躍をしたキャラクターたちが死の運命を覆そうと奔走します。なぜタイムリピートが発生したのか、リピートする条件は何なのか、彼らを死に陥れる謎の小惑星の正体とは、そして連邦と帝国それぞれの思惑…が絡み合う物語です。

 繰り返される時空での役者の細やかな芝居が見どころの一つだと思います。全体的に細部に見どころがあると感じられた舞台でした。
 時間跳躍したキャラたちはタイムリープに動揺したり繰り返すうちに腹をくくったりするわけですが、一方でその時間軸は時間跳躍していないキャラたちにとっては常に「はじめて」でもある…そういう細やかな部分が、表情や仕草で丁寧に表現されている印象を受けました。
 細部と言えば、13人が舞台上で一列に並ぶ場面があるのですが、全てのキャラ(役)の個性が立ち方一つに現れていてぞくぞくしました。足の開き方、左右の位置、重心、全員違って「このキャラならこう!」がまさに体現されてるんですよ。好きすぎる…。

 舞台はコンパクトで装飾もシンプルなんですけど、個人的には「役者の芝居で世界が見える」のが好みなのでグッジョブでした。小道具だと、キャラが持ってるタブレット端末が好きだなー!アクリル板で作られてるのかな。ああいう細かい近未来感(+手作り感)漂う演出がたまらない。
 あと衣装が奇抜すぎない程度にスタイリッシュで、クルー全体での統一感があるのが好きです。赤・オレンジが基調な分、ソーマの青とルナの白(ベージュ?)が際立つ感じも良い。タイトスカートを着ていらしたアリサ(船長)とリョウ(料理人)のおみ足がすらっとしていて美しかったな…。エイジやテルの機関士組の作業着風衣装も好き。

 ネタバレできないのが歯がゆいのですが、抱いた違和感が本当にきれいに明かされていくのが爽快でした。結末含めて私は「好きだー!」と思える作品。ぜひぜひ(また最下部で好き勝手に語ってます)。

*memo*(2018年公演)
Juice=Juice
稲場愛香(鉱物学者 ルナ)宮本佳林(宇宙物理学者 ソーマ)
宮崎由加(船長 アリサ)金澤朋子(副船長 ジン)
高木紗友希(機関長 エイジ)植村あかり(料理人 リョウ)
梁川奈々美(医者 マドカ)段原瑠々(通信士 ツグミ
高瀬くるみ(軍人 レオナ)前田こころ(軍人 カナタ)
清野桃々姫(機関士 テル)山﨑夢羽(操舵手 ミカ)
岡村美波(操舵手 エリー)

脚本 太田善也
演出 西森英行(Innocent Sphere
音楽 和田俊輔
振付 YOSHINO
プロデューサー 丹羽多聞アンドリウ


以下初見ネタバレメモ
・テル、マドカの暗躍(?)までは読めていたけれど、当初から引っかかっていた「何故ルナがタイムリピートできるのか」が明かされた時には「わー!」ってなっちゃったよね。初期に「帝国ではなく連邦側の手先(占有権を得るために早く上陸させたい)」のイメージを植え付けられてたのも大きい。まさか彼女が帝国側の人間で「信頼できない語り手」だったなんてー!まんまとしてやられた観客です(ちょろい)。
・エイジ役高木紗友希さんの演技、一声目から彼の人柄が伝わってきて「わー!好き-!」ってなっちゃいました。口調は荒くてべらんめえだけど、人情に厚い機関士が最初から最後まで舞台にいたよ~!
・副船長ジン役・金澤朋子さんもかっこよかったな-!ロン毛(?)がまた「良い男」にしっかりなってるところもすごい。船長への片思いが敗れ去ったシーンは映像にも笑い声入ってて(わかる)となりました。ちょっとギャグになっちゃったけど、イケメンながらもクルーからの信頼厚く親しみやすい彼が副船長なのは、納得の極みなのです。
・カナタ曹長役・前田こころさんの空手(?)の型キレッキレでニコニコしちゃった…手足がすらっとしているのも相まって格好いい。所感なのですが、Juice=Juiceは平均身長が他のユニットより高めだったりしませんか?単純に顔の小さいスタイルの良い子が多いのかしら。
・ソーマ(宮本佳林さん)のどもりは演技なのか素なのかちょっと気になって時にふふってなったけど、ちゃんとそれが「ソーマ」になってて好きです。
・ルナのトラウマ(であり潜在的な願いでもあった)「手をつなぐ」がタイムリープの鍵になるの泣いちゃうんだよな…。
・ルナ(稲場愛香さん)の選択、結末は脱出ポッドの存在が臭わされていたゆえに予想外ではなかったんだけど、でもどこかあの時空で決着が付くのではとも期待していたので、ルナとソーマの世界線が分かたれてしまったのは切なくてほろっときた。
・「恋」ではなく「愛�� �の物語であったのが個人的には良かったと思う。これはルナとソーマのことだけではなくて、クルーそれぞれに船の外に大切な人が居ると描いてくれた点でもそうで、世界や人のつながりの広さ、そして生きる(生き残る)意味についても考えさせられた。
・切ないラストだけど、私はいつか、ソーマがタイムリピートの法則を解明して、爆発を誘発するクリスタルクォーツを遮断する装置も作って、あの日を繰り返し続けているルナを救う、そんな日が来ると信じています。し、あの日を繰り返す中でもルナはきっと、ソーマの存在に励まされ続けて行くのだろうな。ふたりが手をつないで笑いあえる、愛を伝え合える日がまた来ますように。