KANGEKI-LOG

観劇とか感激とか思考の吐き出しとか

【観劇記録】I will always remember you

演劇ユニット「カニバル!!!!」さんの公演「I will always remember you」を観てきました。お初のユニットさん、お初の演者さん、お初の箱。

f:id:ao_toko:20210508170134j:plain

会場前の撮影フリータイムにて。一眼と魚眼持っていけばよかった。

わくわくしません?

写真の通り、とても小さな箱…もとい、実は蔵です。蔵なんですよ。それがまたいい。ドラえもんの、勉強机の引き出しからタイムマシンの世界に飛び込むような高揚感がある。日常から非日常へ、綺麗に気持ちが切り替わる。

会場に足を踏み入れた瞬間視界を占拠する、床に壁に貼られた付箋、付箋、付箋。カラフルで、そこはかとなくサイケデリックな色合いで、ドット絵めいても見える。目を凝らせば付箋には数式や英語や断片的な言葉が書き散らされている。観客を迎える3人の演者のうち1人は白衣を着込んでいる。科学者か、あるいは医者か。なんとなく、この舞台の空気がつかめてくる。

あらすじ

ある日、あの子は未来に向かってのみ時間を跳ぶことのできる能力を手に入れます。この謎を解き明かそうと、3人の男が言葉を尽くします。あの子を今に留めていたお兄さんが病死します。楔を失ったあの子は、お兄さんの夢だった火星への宇宙旅行が実現しているであろう遠い未来に跳ぶ決意をかため、朝焼けの向こうに、未来に跳んで行きました。

以下、ネタバレに配慮しようと思ったけど配慮できないし、考えるより感じろになってしまって電波になってしまった感想。箇条書き気味。記憶が抜けてたり間違ってるところがあったらごめんなさい。

Aパート

3人の男たちが矢継ぎ早に語る時代の移り変わりが面白い。あ、もしかしてあれのことかな、あれ、そのことは知らないな、え、今(劇中時代)はそんなことになっているのー!?と前のめりになる。その激動し変遷してきた時代と相反するかのように、ぽつんと浮かび上がる「あの子」の存在。こうたが口にした「あの子は本当に少ししか変わっていなかった」という趣旨のセリフ、見終わった今だと(こうた…)の気持ちになる。

Bパート

りょうた(演・三河さん)、語りまくる。目がキラッキラしている。圧がつよい(ほめてる)。淀みない、すごい。

この辺思い切り自己解釈になってるんですけど、宇宙と科学の話であり、自他と哲学の話であると受け止めてました(私の中では同質なんですこの二つ)。「こっち(自分)」と「あっち(他者)」が相互に作用することで、互いの存在が立証される。不可能が存在するがゆえに可能が存在し、「ない」が「ある」から「ある」がわかる…みたいな。極め突き詰めていったものは、一点に収束されてるかのように似ていく(ように見える)けれど、それが真に収束点(終わり)であるかは誰も証明ができない(シュレディンガーの猫のごとく)。可能と不可能、自分と他者の浸透圧。あ、だめだな電波めいてきた。とにもかくにも、小気味好く耳に飛び込んでいくる、心地よい語りとやりとりでした。

「あの子」が未来に跳躍した原理の解明(考察)に前のめりになるりょうたと、耳を傾けてはいるけれどどこか一歩引いているようなこうた、彼らのやりとりを整理していくように言葉を落としていくのぶ先生。「あの子」に向ける三者三様の眼差しの片鱗を感じたパートでもありました。

Cパート

医者であるのぶ先生(演・村上さん)と「あの子」の間にはまず「お兄さん(患者)」がいる、というのが印象的。「患者の妹」の側面が強かったんじゃないかなあ、などと。あるいは彼女自身も「患者」であったのか。

お兄さんの難病は、まるでりょうたが語った「あっち」にアクセスする術を得た人に課せられた代償のようでもある。そう思うと「あの子」はある種お兄さんと同質というか、「あっち」にアクセスができる上、本来なら命を削る代償に対抗する「抗体」を持っている「新人類」みたいにも見えてくる。

お兄さんと同じ難病の人たちには現状、緩和ケアのような対処しかできない。のぶ先生はお兄さん以前にも患者を看取ってきたのかな。それでも治療の道を模索してきたんだろうな。母数の少ない難病の解明よりも需要が大きい(利益が見込まれる)認知症の解明(対策)に研究費が持ってかれるのがリアル。

Dパート

こうた(演・掘さん)と「あの子」のパート。私の中では情景が薄川の河川敷でした(冬に見晴橋のあたりで朝焼けとモルゲンロートを撮ったんですよね)。北アルプスから登る朝日に向かって河川敷を駆けていく二人、朝日にとけて「跳んで」いくあの子、みたいなイメージでした。あの子を見送るしかできなかった、あの子の「楔」になれなかったこうた…。掘さんの走りながらや背を向けた後の台詞、めちゃくちゃ良かったです。言葉にしてしまうと陳腐だけど、疾走感と青春感めっちゃ浴びた…甘酸っぱかった…。

こうたからあの子への感情の矢印は恋愛でなくても全然全く構わないのですが、Aパートで、彼女が未来で彼らの前に姿を現したのが、先生の結婚式とりょうたの娘が生まれた時(記憶曖昧なので間違ってたら申し訳ない)と語られていたのを考えると、こうた…の気持ちになりますね。時の流れが異なってしまった、あの子とこうた…。

 

I will always remember you

タイトル。直訳するなら「あなたを忘れない」。「(あなたを)忘れない」って「(あなたにもわたしを)忘れてほしくない」の裏返しでもある気がする。私が貴方を忘れた時、貴方の存在によって証明されていた私自身もまた、喪われるのだ、みたいなことを考える。劇中では、三人の男が「あの子」を語ることによってその存在を証明していて、逆に、語られる「あの子」によって彼ら三人もまた、描かれている。Bパートの感想にも書いたけれど「相互作用」を強く意識した物語でした。

あ、あと最後に「あの子」の名前が「ユウ」だと明かされるわけですが、これは「you」でもあり「有」でもあるんだなと。

 

その他のこと

・衣装。こうたとのぶ先生がモノトーンだった分、りょうたのシャツが有色だったのが個人的に意味深に見えたというか、そこに意味を見出したいな…の気持ちになった。白い衣装がプロジェクターの映像で染まるのも面白かったです。

・舞台美術始め、プロジェクターや音楽といった演出が素敵でした。あの箱の規模感にすべてがぴたっとハマってて心地よかった。四方向からのライトも良かった。青のライトがブラックライトっぽく衣装に反射してて面白かったです。

 

めちゃくちゃ濃厚で脳みそが活性化した舞台でした。役者のお三方、裏方の皆様、素敵ば舞台をありがとうございました。

また思い出し次第追記します。!