KANGEKI-LOG

観劇とか感激とか思考の吐き出しとか

【映画感想】アイの歌声を聴かせて

ainouta.jp

観てきました。良かった!
AI×ミュージカル×正統派青春群像劇でした。セカイ系ではなく、あくまでもシオンを取り巻く等身大の高校生たちの日常の延長線上にある、彼らしか「ほんとう」を知らない、けれど彼らにとってはかけがえのないものになる数日の出来事って感じの規模感も良かった。

景部高等学校に転入してきた謎の美少女、シオン(cv土屋太鳳)は抜群の運動神経と天真爛漫な性格で学校の人気者になるが…実は試験中の【AI】だった!
シオンはクラスでいつもひとりぼっちのサトミ(cv福原遥)の前で突然歌い出し、思いもよらない方法でサトミの“幸せ”を叶えようとする。 

彼女がAIであることを知ってしまったサトミと、幼馴染で機械マニアのトウマ(cv工藤阿須加)、人気NO.1イケメンのゴッちゃん(cv興津和幸)、気の強いアヤ(cv小松未可子)、柔道部員のサンダー(cv日野聡)たちは、シオンに振り回されながらも、ひたむきな姿とその歌声に心動かされていく。

 AIであるシオン役の土屋太鳳さんの芝居が、すごい。

 シオンの話し方は、きちんとロボットなんですよ。明らかに人間じゃないの。でも棒読みでも無機質でもない。彼女に接した人たちが彼女に「人間と同じ心」があるんじゃないかと思ってしまうのがわかる、絶妙な塩梅と温度感。それでいて物語のキーの一つになってる「歌」がめちゃくちゃ心地よい。シオンは突然歌い出すんですけど、周りがちゃんと戸惑ってるのも面白い。最初の曲「ユー・ニード・ア・フレンド」では、シオンが校内のシスタムに介入して、放送スピーカーが音楽を奏で、電子黒板に楽譜が現れる。めっちゃ楽しいシーンだった。好き。

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 劇中歌で一番好きな曲。聞いて。

 シオンが紆余曲折あって、なかなか本番で勝てない柔道部員の少年・サンダーの乱取りに付き合うシーンで歌い出す曲なんですけど、乱取りを舞踏会に例えながらのビックバンドにのせての歌唱、あまりに楽しい。あとこのシーンのシオンの表情がめちゃくちゃいい。

 表情といえば、キャラクター原案が紀伊カンナさんなんですけど、キャラデザの島村秀一さんが紀伊さんの描く生き生きとした人間の表情を、損なうことなくアニメの絵として落とし込んでくれててめちゃくちゃ良いです。紀伊さんの漫画好きな人にも見て欲しい。特にサトミとトウマが好きだな。紀伊さんの描く絵のショートカットの頭の丸みが好きなの。

 話があっちこっちにとっ散らかってますが。

 これはもう多くの人が言及してるんですけど、シオンの行動原理は徹頭徹尾、人間の「命令」なんですよ。命令がないと彼女は動けないんです。どこまでもAI。でも、前述の通り、彼女に接した人間は、彼女の行動に、表情に、歌声に、心を見出していく。シオンはただのAIじゃない(私たちと同じ)、と思うようになるし、彼女から受け取ったもので自身もまた変化していく。その書き方が本当に秀逸だなと思いました。

 監督は以前にも「イヴの時間」というAI(アンドロイド)をテーマにした映像作品を手がけていて、私はこの作品がめちゃくちゃ好きなんですけど。イヴのときは「アンドロイドにも人間と同じ心(大切な誰かのために動きたい意思)がある」というテーマめいたものが根底にあったと思うんですが、アイでAIはあくまでもAI(人間とは違う)、けれどそのAIの言動を受け取る人間は何を見出すのか、ってところがアツかったです。受け取るといえば「AIが人間の命令をどう受け取るか」というところにも焦点が当てられてて、そこもまた物語のキーになってる。

 あと世界観も好きです。日本家屋があり田園が広がる田舎めいた風景のなかに、当たり前のようにAIが組み込まれている。朝はカーテンが自動で開けられて、住民の生活は記録されてて、田んぼではロボットが田植えをして…っていう、今のその向こうにありそうな世界。キャラクター達もみんな高校生ー!って感じが愛おしい。一人ひとりに言及するとキリないからとにかく見て。元気でるよ。さわやかな気持ちになるよ。

 そんなわけで、観てよかったー!となった映画でした。また追記するかも。