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観劇とか感激とか思考の吐き出しとか

【観劇記録】続・11人いる!東の地平・西の永遠

LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」の次は、同じくハロプロの「演劇女子部」さん上演の「続・11人いる!」を。両作ともU-NEXTで配信中です(1ヶ月無料トライアル、あります)。
演劇女子部さんは複数作配信されてるのですが、なぜ本作を選んだかというと…萩尾望都さんの原作漫画が子供の時から大好きだから〜!(母がファンで私も読んでいた)。
本舞台はオールダブルキャストで上演されています。「EAST」版と「WEST」版の順で鑑賞(そして円盤も注文した)。リリウムに出演されてるキャストさんたちの全く違う芝居が観られたのも衝撃&感動でした。立て続けに見るの、オススメです(いい意味で心をめちゃくちゃにされる)。

あらすじ
テレパス能力を持った少年・タダと、男女両方の性を持ち、大人になる時に性別を選択する運命を持つフロル。2人は宇宙大学入学試験に合格し、恋人同士となる。ある日、タダのもとに東の国を治めるバセスカから手紙が届き、タダとフロルはバセスカを訪ねる。
萩尾望都原作のSF大作にモーニング娘。'16が挑んだミュージカル

話の軸となるのは、あらすじにも出てくるタダのフロルのカップル+入学試験で友情を育んだ、アリトスカ・レ(東の地)の王・バセスカと、アリストカ・ラ(西の地)の王族・フォース。
バセスカとフォースの母星(宇宙規模の話なので国ではなく星なんですよね)は隣り合う兄弟星。しかし、鉱山を巡る武力紛争が続いている。
そしてタダとフロルの滞在中、東の地でクーデターが発生。バセスカは王位を追われ、大人たちの策略により東西は戦争状態に。バセスカとフォースは対立する立場になります。国か、家族か、友情か…戦争を止めることはできるのか。そして「愛する」とはなんなのか…彼らの選択をぜひ観てほしい。

原作の男性役も全て女性のキャストさんが演じます。それがまた良い味を出してる。EASTもWESTも筋書きは同じですが、衣装のデザインと配色が異なっていたり、細かいセリフの表現がキャストさんによって違ったりで、比べやすくて面白いです。

2作品の雰囲気の違いは、バセスカ&フォースの違いが大きい気がします。役作りとして重なる部分もあるのですが、EASTの2人は葛藤や信念のぶつかり合いとどっしりとした王族感が勝り、WESTの2人は友情と故国の間に惑う青々しさと繊細さの残る青年感が勝る、というのが私個人の印象。どちらもすき。

タダとフロルは、EASTは柔らかく知的な雰囲気のタダ&本当に性別の真ん中にいるようなフロル、WESTは爽やかな少年感のあるタダ&恋を踏まえた上で少女が内側からかすかに香るフロル、みたいな感じでした。なおEASTではフロル、WESTではタダを工藤遥さん(リリウムではファルス役)が演じています。すごい…(し、他のキャストさんも全く違う役を両バージョンでやってるので、感動通り越して目が回ります。笑)。

演劇女子部のキャストさんの演技、みんな好きだなあ…。女性だけの舞台という華やかさももちろん良いですが、私はアイドルであるときの彼女たちの表情を知らないので、舞台上の彼女たちの芝居が今の所私の知る全てで。舞台の彼女たちは、可愛いというよりも苛烈で、甘やかというよりも泥臭く、板の上にむき出しの魂、生命力の塊があるという感じで、好きです(きっとアイドルであるときも素敵なのだろう)。歌とダンス、今回もキレッキレだった!
あと、元宝塚の男役である汐月しゅうさん、未沙のえるさんがご出演されていて、お二方の演技と歌唱がめちゃくちゃ舞台を引き締めてます。お二人の歌声やセリフの響きやキレはまさに「歴戦の猛者」という感じで、まだ女子演劇部のキャストさんには出せないと思わされちゃう貫禄がある。めっちゃカッコいい。
私はヅカにまったく馴染みがなくて知識もほぼないのですが、お二人が出てきた瞬間「え、ヅカじゃん…」と思いました。本当にヅカだった。すごい。

リリウムが衣装や演出でどっぷり世界観・空気感にまで浸れる&酔えるタイプの舞台だったのに対し、11人は近未来SFというのもあって最初は没入しづらかったのですが、キャストさんの一挙一動でおぼろげだった漫画のコマ割とかセリフがぶわっと思い出されていくのが凄まじく爽快でした。
個人的には原作読んでから舞台観るのがオススメ(あくまでも「続」の舞台化なので、その前座というか本編を読んどくと解像度めちゃくちゃ上がると思います)。でも原作知らずに観る体験もしてみたかったかな…。読む前と後で2回観るのはどうでしょう、これだ!(名案)。

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余談
萩尾作品の舞台に触れたら他の萩尾作品の舞台も見たくなって、別の劇団さんの作品ですが「トーマの心臓」も円盤を…買いました…。そう、そうだ、萩尾作品と言えばリリウムがお好きな方には「ポーの一族」おすすめです。永遠を生きる吸血鬼の少年・少女の物語です。

*memo*(公式サイト
イースト■
タダ:石田亜佑美/フロル:工藤遥
バセスカ王:譜久村聖/フォース:小田さくら
チュチュ:野中美希/オナ:牧野真莉愛
レッド:生田衣梨奈/トマノ :佐藤優樹
石頭:羽賀朱音/ローン:尾形春水
アナテイ:飯窪春菜/アマン伯爵:浅倉樹々
ドゥマー:小片リサ
■ウエスト■      
タダ:工藤遥/フロル:小田さくら
バセスカ王:佐藤優樹/フォース:石田亜佑美
チュチュ:牧野真莉愛/オナ:譜久村聖
レッド:岸本ゆめの/トマノ :尾形春水
石頭:生田衣梨奈/ローン:飯窪春菜
アナテイ:山岸理子/アマン伯爵:野中美希
ドゥマー:羽賀朱音

ゾンブル:汐月しゅう/バパ大臣:未沙のえる

Staff
原作:萩尾望都「続・11人いる!東の地平・西の永遠」(小学館刊)
脚本:坪田文
演出:西森英行(Innocent Sphere)
音楽:和田俊輔
振付:振付屋かぶきもん
プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ(BS-TBS)
主催・企画・制作:BS-TBS / オデッセー


以下、箇条書きネタバレ初見メモ。
・2作品みて一番印象的だったのは、フォースの「彼は友達なんだ」のニュアンスの違いだな。小田フォースは葛藤の中で絞り出すように、石田フォースは張り裂けるような叫びで表現する。続くバセスカ・フォースの「僕は君を殺さねばならない/僕は君を殺す」「君に殺されるわけにはいかない/私は死ねぬ」の掛け合いが一番劇中で好きな見せ場。
・両作ともチュチュ姫が好きだなあ。野中さんも牧野さんも、姫君の気品と家族思いな部分が顔に表情に現れている…。「兄の名を呼ばないで!」「お前に約束をする誇りがあるの」「おやめ、何をいうの」の下りがめっちゃすき。原作の表情と声のイメージとテンポそのままなんだよ…。
・指を切られそうになるフロルの代わりにタダがなるオリジナルの一場面、よかったです。タダという少年の「愛し方」を象徴するシーンでもある。言葉がないと不安だったフロルの心が、タダの行動で開かれていく感じがまた尊いのだ…。
・フロルは作中では女でも男でもなくて、最後には「(タダのために)女になってもいいぜ」とも言うのだけれど、フロルが男になっても女になっても、その傍らにはタダがいると思うんですよね。そんな2人が、小さい時から好きです。
・思いあってるバセスカとオナが結ばれない、そしてバセスカとチュチュ姫が婚姻を結ぶ、という展開が私はすごくすき。それはけして不幸ではなく、それぞれに途切れることのない深い想いの繋がりがあるんですよ…。3人の選択は、巫女であること、王族であることの誇りのあわられであり、亡き人の思いを繋ぐ決意でもある。好き。
・「和平を望んでおります」で毎回涙腺決壊してしまう。ローンおじさまいいよね…。あとバパ大臣とバセスカの関係よ…。
・「死にたいときに死ねぬ」と匂わすの、ほんとさぁ…ほんとさぁ…(萩尾先生の作品に対してもう好きしかない)
・魂通しの交流を描くのに歌が挿入されるの好き。タダもフロルも、バセスカ�� �フォースも、視線を交わす(目を合わせる)一瞬の中であまりに膨大で言葉にできない想いを交わし合って、通じ合ってるんだよね。
EAST

画像1

・譜久村バセスカがもう、圧倒的にカッコいい。最初から最後まで圧倒的「王」。カリスマと誇りを感じさせる。内側から光る。「私は誰だ」「マヤ王バセスカだ」の下りが狂おしく好き。あと衣装が好き。アリトスカ・レは一応「冷たい風が吹く」と表現されてるので、EASTのあとに観たWESTの衣装が配色とモチーフが入れ替わってアラビア風になったのはちょっと最後まで違和感があったかも(というかやっぱり初めに見たEASTの印象に引っ張られちゃうのかな)。でもどっちもよかったし好き〜〜〜。
・小田フォース…赤の衣装がめっちゃ似合う。あとお顔立ちがはっきりしてるからアラビア風の衣装めっちゃ映える…。あとリリウムオープニング?の時も思ったけど、力強い歌唱本当にすき。
・工藤フロルの中性感…。工藤さんの芝居は(まだ2作見ただけだけれど)良い意味で最初は「浮く」印象があって。観る側に小さな引っ掛かりを残すんですよね。でもそれが進行とともに舞台の一部になってどんどん加速して深化していく。惚れちゃう。
・佐藤さんのトマノ可愛すぎて、クソ野郎なのに憎めなくて困る。WESTでバセスカやってるの「???同一人物…???」とならざるをえない。
WEST
・「11人いる」の時の若者感がある、けれども誇り高き王族の佐藤バセスカ〜!!でもあなたさっきチャランポラントマノ演ってましたよね!?と上記の通り頭が混乱する。あえて低めの声出してる時も素の声に近い声の演技の時も好き。なんとなくWESTのバセスカが本当の意味で「王」になったのはフォースの死を経てのような気がする(EASTにもその側面があるけど、こちらのほうが強く感じる)。
・石田フォース、繊細な感情と潰れそうな苦しさが前面にでてる。バセスカとの掛け合い、めっちゃ声震えてるのが「ああ…ああ…」ってなって泣いてしまう。「殺す」を自分に言い聞かせるように歌うんですよね…。
・小田フロル、乙女〜〜!(いや女じゃないんだけど!)乙女というより…なんだろう、とにかく可 愛いんですよね。でもあくまでも自然体なの。EASTでフォースやってた人なの???本当に???
(また多分追記する)

追記
・なんとなくなんだけど東は原作ベースの配役で、西はハロヲタさん向け(歓喜)の配役のような気がする。西はハロヲタさんなら「そうきたかー!」とか「わかってるなあ!」と唸らされる配役というか。佐藤さんのバセスカ役とか、工藤さんのタダ(男装)とか、美しい譜久村さんとか。それでいて役作りもうまく東と差異を出してて、うまいなぁと感じる。だからどっちも好きだなあって感じられるんだろうな。
・東が(どちらかというと)原作再現に重きをおいてると感じられるのはバセスカの衣装というか帽子が明らかに原作よりだから(洋風で羽根がある)。西で衣装の色彩と国のコンセプトごとひっくり返してるのも、2バージョンの違いがわかってくるとなおすとんと納得できる。