KANGEKI-LOG

観劇とか感激とか思考の吐き出しとか

出会った時には終わっていたバンドと私が9年越しにはじまった話

 初めて買ったCDは、出会ったのとほぼ同時期に活動を休止したバンドの作品だった。

 2011年1月1日。高校3年生の私は、唯一自由に使えるお金であるお年玉で(我が家はお小遣い制度がなかった)、そのCDをAmazonで注文した。

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 2011年6月に活動を休止した、青森県出身の4ピースロック・バンド「LOCAL SOUND STYLE」――私は今も彼らのことをほぼ何も知らない。ただただ、出会ってから今まで、曲を繰り返し聴き続けている。

 初めて耳にしたのはニコニコ動画で目にしたRPGゲームのMADだった。
 曲名は「Sympathy(シンパシー) 」。歌詞は全て英語で断片的にしか聞き取れなかったのに、イントロから最後まで惹きつけられた。

 曲調には、澄んだ青空を思い起こすような爽やかさと疾走感があった。ボーカルの男性の歌声は飾り気がなくて少年めいていて、まっすぐでどこまでも伸びやかだった。

 それなのに。

 あの曲は、間違いなく、あの頃の私が抱えていた悲鳴に似た叫びそのものだった(ように聞こえた)。世の中の窮屈さとか息苦しさとか自分の居場所や未来への漠然とした不安だとか、そういうの全部ひっくるめて、青空に叫んでぶつけている曲だ、と思った。添えられていた字幕を見なくてもそう感じていたと思う。言葉を超えて、音と声が私の内側に飛び込んできて共鳴した。
 全てが初めての体験だった。
 雷に打たれたように「これは私の曲だ」と思った。

 2011年は、多くの人にとって忘れられない年だと思う。東日本大震災の年だ。

 CDを買った1月、震災が起きるなんてつゆとも知らない受験生の私は、iPodから流れる音楽を毎日毎日しがみつくように聴きながら、今までの不勉強を嘆きつつセンター試験に向けて勉強をしていた。

 それまで聴いていた曲といえば、弟から借りたボーカロイドだとかツタヤでレンタルしたアニソンばかりだった。だから、LSSのCDをiTuneに取り込む時、とてもどきどきしていた。英語の歌詞は勉強の妨げにもなりづらかった。

 LSSの曲は暗いトンネルを進む私の鬱憤や不安を代わりに叫んで吹き飛ばしてくれて、それでいてトンネルを抜けた先にはきっと光と青空があるのだと教えてくれる、そんな存在だった。

 受験も無事終わって大学の入学式を待つばかりの頃に、震災があった。大学の入学式はなくなって、スタートも5月からになって、やることもできることもないのに気忙しくて、大学が始まったら始まったで慌ただしかった。夏頃、ふと思い立ってLSSについてインターネットで調べ、私は、彼らの活動停止を知った。
 出会った時には終わっていた。知るべき時に知る機会を逸してしまった。
 私の手元には彼らの曲だけが残った。wikiには活動停止の理由も一応書き込まれていたけれど、そもそも知らない人たちのことでもあったから、なにもぴんとこなかった。曲だけがずっと、私のそばにあった。

「Sympathy」は10代の私の息苦しさを空に打ち上げてぶちまけて昇華してくれたような曲で、いっとう救われた曲だったのだけれど、もちろん他の曲も好きだ。相変わらず歌詞全部を聞き取れるわけではないけれど、聴いた後に少し足取りが軽くなって背筋が伸びる曲ばかりで、受験機とかわらず私にとってのお守りなのだ。

 実はここからが実質本題なのだけれど。
 今回私はnoteのお題企画「#はじめて買ったCD」を書くために改めてCDを引っ張り出し、そして久々にgoogleの検索窓に「Local Sound Style」と打ち込んだ。

 そしたら

LOCAL SOUND STYLEが約8年ぶりに活動再開、2020年2月にはワンマンライブも(コメントあり) LOCAL SOUND STYLEが活動を再開。2020年2月24日に青森・Mag-Netでワンマンライブ「LOCAL S natalie.mu

 なんだってー!?!?

 このコロナ禍の影響でライブの中止やアルバム発売の延期などに見舞われてはいるものの、昨年に再始動されていた。

 Apple Musicに最新にして再録第1弾のアルバム「All That Remains」が入っていたのでDLをして聴いた。「Sympathy」の再録ver(でいいのだろうか)も収録されていた。再生した瞬間に「あ、今まで聴いてきた曲と違う」と思った。楽器のアレンジも少しずつ違うし、何より、歌声が。

 当時は少年めいてた(と感じた)雰囲気が、ほのかにやわらかく大人になってる感じで。なんかもうそれだけで泣けた。大きく変化しているわけではないのに、今はもういつかとは別の場所にいる人が歌っているのだとわかって、時の流れと、生きてるってことと、人は変化してくんだってことと、でも変わらないものもあるんだ、っていうのが端々から感じられて、1人で号泣してしまった。

 私も今、9年前の自分には想像のできない場所にいる。Iターンで縁もゆかりもない地方都市に就職したし、職業だって思いもよらない職に就いた。そういう物理的なこと以外にも、本当に今の私は、9年前には少しも想像できない私になった。

 自分のことともごっちゃになった気持ちがとにかく胸を占めて、どの曲を聴き比べても泣いているし笑っている。ありがとう、という気持ちに包まれる。LSSのサイトを開いて、メンバーの名前を覚えるところから始めている。いつかライブに足を運びたい。ありがとうと伝えたいし、生の演奏と歌声を全身で浴びたい。

LOCAL SOUND STYLE LOCAL SOUND STYLEオフィシャルWEBサイト www.localsoundstyle.jp

 「All That Remains」はCDでも注文した。明後日には届く予定だ。
 次に控える再録2弾のアルバムは「Make It Through」。その次にはきっと、新曲がくるのだろう。出会った時には終わっていたバンドが、これから追いかけられる、同じ時を進んでいく存在になるとは思っていなかった。10代の私を救いあげてくれた楽曲に20代になっても励まされながら、そして新たな曲に背中を押されながら胸を張って30代と、その先へと進んでいける気がしている。

 ありがとうLocal Sound Style。応援しています。みんな聴いてね。各種サブスクでも聞けるよ!

9/13追記

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届いたよー!!(そしてnoteがピックアップされていて腰を抜かしました。読んでくださった方、ありがとうございます)