KANGEKI-LOG

観劇とか感激とか思考の吐き出しとか

【観劇記録】TRIANGLE-トライアングル-

 ハロプロ(演劇女子部)を推す先輩方からのアツいオススメに天啓を受け、円盤お迎えしました「TRIANGLE(2015)」。パッケージではどんな物語が全く想像が付いていなかったのですが、ざっくりくくると「SFファンタジー」ものです。

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あらすじ
舞台は争いのない惑星アルファ。女王陛下の「天のお告げ」に従ってサクラ姫の婚約の議が執り行われる。サクラ、幼なじみのオメガ人アサダ、戦いの星ヴィータから移住したキリの複雑な想いを描く物語。

 サクラの視点の物語『α』、アサダの視点の『β』を立て続けに鑑賞。私は『α』を観た後「え、この結末なの!?」と少々びっくりしていたのですが、それが『β』で解き明かされ「なるほどなあ…」となりました(ネタバレ避けると具体的に何も言えない!笑)

 開幕した瞬間思ったのは「舞台が可愛い!」。パステルカラーにキラキラ点滅するお星様。例えるならディズニーシーのマーメイドラグーンのよう(ヒトデの髪飾りとか、海藻っぽい舞台装飾もある)。
 なにより、この世界(星?)には「スワスワ」という発光して電気(エネル)を作るクラゲのようないきものがいるのですが、この「スワスワ」をキャストさんが白くてふわふわした衣装を着て演じていて、大変に可愛い!「スワ〜」って鳴く(話す)のもキュート。癒し。

 物語は、展開の起伏は激しくなく、2パターンの公演を通じ、てサクラの婚約をめぐる、3人+サクラの侍女・ローズウッドの4人の関係の変化と選択が描かれています。原案となった短編(視聴後に拝読)とはまた少し異なる趣で、そこもまた良い(し脚本の意図を考えるのが楽しい)。

 主役のサクラは、天真爛漫で純粋。大切に育てられてきた箱入り娘(お金のこともよくわかってなさそう)。でも周りの人を振り回すような強引さはなく、優しい雰囲気。思っていることと言葉にすることが一致している、裏表のない少女。
 演じる石田さんは、本作以前の公演「LILIUM」や「ごがくゆう」では闊達で気の強そうな少女を、本作後の「続・11人いる」では爽やかな好青年を演じていたのですが…さらなる可能性を見てしまった。とてもとても可愛い。ポニーテールが無限に似合うし笑った時の細まったお目目にきゅんとしてしまう。

 そんなサクラをめぐる2人の男性。工藤さん演じるアサダと、鞘師さん演じるキリ。
 アサダはフワフワ使い(羊飼いみたいな感じ)の平民で、サクラと親しい朴訥な青年。スワスワのお世話してる時が大変にかっこかわいくてきゅんとする。キリは怜悧な空気を纏う戦士で、手が触れた相手の心を読む力を持っている。αで殺陣の見せ場があるのですがめちゃくちゃかっこよかった。

 はてさて「天のお告げ」が指し示す婚約者……サクラと将来結婚するのはどちらだー!?というのが話の軸です。

 「天のお告げ」を示すのはサクラの母で「女王」のイオタ(演・譜久村聖さん。似合う。歌も良い)。須藤茉麻さんのゼータ国王(この場合「王配」なのかな)もこの作品で描かれる「選択」に置ける重要なポジションを陰ながら担っていて、味があった。
 あと、先述した侍女のローズウッド(小田さくらさん)の演技が控えめながらも随所で凄まじく光ってます。前年のリリウムが初舞台だったんですよね…小田さん…この1年に何が…というレベルでさらに磨きがかかってたなあ。

 音楽とダンスは今まで見てきたミュージカル作品と比べると初見ではそこまで耳に残ったりインパクトがあったり…って感じではありませんでしたが、じわじわ好きになりそうです。

 あ、あと衣装がね〜!!やはりそこはかとなくマーメイドチックでもあり、アラビアンな民族風味もあり、メルヘン異国籍な感じがすごく可愛らしかったです(だけにキリ中尉の衣装は黒+赤の直線的デザインで良い意味で浮いていたな)。

 劇的な衝撃のある物語ではないけれど、2パターンを重ね合わせながら一つ一つ答え合わせをしたり、言葉や心、彼女たちの選択に想いを馳せる時間に穏やかな充足感を覚える、そんな作品だと思います。(ネタバレは最下部に)

*memo*(公式サイト
イオタ:譜久村聖/キリ:鞘師里保
サクラ:石田亜佑美/ダイス:佐藤優樹
アサダ:工藤遥/ローズウッド:小田さくら
ジョンベル/ スワスワのクロエ:尾形春水
クラルス/スワスワのルーン:野中美希
スワスワのリンディ:牧野真莉愛
リベット/スワスワのホップ:羽賀朱音生物
ゼータ:須藤茉麻
ブナ/スワスワのシェール:石井杏奈
オバンコール/スワスワのナビィ:小野田暖優
チーク卿/スワスワのフィラ:小片リサ
ピンプ/スワスワのカイト:高瀬くるみ
原案:くらもちふさこ [α] -アルファ-(集英社 刊)
脚本:塩田泰造(大人の麦茶)
演出:吉田健(TBSテレビ)
音楽:市川淳
振付:YOSHIKO
プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ(BS-TBS)
主催・企画・制作:BS-TBS / オデッセー


以下、いつも通りつらつら語る初見ネタバレメモ
・アサダとくっつくと思ってた!笑 アサダが隠れヴィータ人なのは割と初期からわかっていた(からこそ「実は婚約者はアサダでしたー!」パターンかとおもっていた)、αの結末は結構びっくりした。原案の漫画読んでみたら、漫画はそのパターンだったからさらに驚き。
・でもアルファの時点でキリ→サクラへの想いは描かれているし、サクラの決断や、αではっきりしなかったアサダとローズウッド周りもβで綺麗に解明された感じ。最終的にはすとんと納得したというか、やっぱり決め手は、最後にサクラがアサダに(不正確な記憶だけど)キリから贈られた言葉を用いて「心を読むよりも早く気持ちを伝える方法がある」って言ったところかな。キリに言われた場面はサクラにとっては余り良い思い出ではないのかも知れないけれど、あの言葉をきっかけにサクラは「心」や「心を読まれること」について考えて変化していったんじゃないかなと感じるので。
・サクラ姫は「心を読まれること」を恐れている。婚約(相手はわからないが)決まったらなおのこと、特に読まれたくないのは「アサダへの恋心」…だとは思うんだけど、実際のところサクラには裏表がないんですよね。そこに、心を読んでしまうキリもアサダも安心感を覚えて惹かれていくわけで。女王も国王も、サクラがアサダを好いていたのには気づいていた気もする(王様は何回か聞いてたし)。
・この辺まだ明確に考えられてないのですが、サクラにとって内側であふれだす「心」と、意志を持って外側に出す「言葉」は同じ内容でもまったく違う、だから読まれたくないのでは、という気持ちが私の中にある。この辺に「争いを知らない」ことが絡んできそうな(脳内で)気がするんだけど、まだまとまらない。
・「触れれば ココロが、あふれだす」がこの作品のキャッチコピー。作品を通して、手を繋ぐ(触れる)ことの違いや変化が面白い。キリ・アサダにとってはそのまま「心を読む(� ��ふれだすココロに触れる)」行為でもあり、前半のサクラにとっては「心を近づける(好き/恋心を増大させる)」行為である。そして、後半のサクラにとっては、心を読むキリ・アサダの「手を取る」ことは、自らの意志で「心を差し出す」こと。ラストに手を取り合ったサクラの心の内をキリだけが知ってるの、ニクいなあ。
・構図的にはサクラはまるでローズウッドにアサダを譲ったようにも見えるけど、「心を読みましたか?」の時点でもうしっかり、キリを選ぶことを決めてるんだよね。でもちゃんと言葉にして伝えるんだよ、サクラは(この辺先述のことに繋がりそう)。彼女のまっすぐさが好きです。
・ローズウッド。アサダがヴィータの力を持っていなければきっとアサダへの思いも婚約の経緯も全て、きっと1人で墓場まで持っていった子だと思うのね。そして彼女もまた、読まれて困る心などないほどに裏表のない「もう1人のサクラ」のような存在だった。アサダはその安心感安定感にほだされた部分もあるのかなあ、へたれー!とも思ってしまうのだけれど、あれだけ陰ながら献身されてたらやっぱり、情は湧いてしまうよね。
・キリ様あまりに健気でびっくりしちゃった…。といいつつ、手に入れるためならなんでもするも一つの本音だったような気もする(でもそれを徹底できないのが人間臭くて良い)。邂逅のあとは、一度もサクラの心を読もうとはしなかったのがまたな…(でもサクラの気持ちが全部お見通しなのもまた。五感を使ってじっとみてきたんだね)。あ、サクラ姫とのダンスがキレッキレでよかったな。最初1人で踊り始めて何事かと思ったら触れないためだったのさあ…そういうところ…。練習の成果はぜひ結婚式で披露してください。
・触れれば心が溢れ出す」けれども、彼らの決断が溢れ出した心を超えた(あるいは別の)ところにあるのがなんともこう、切なくもありどこまでも「人間」を人間たらしめるものでもあるなと思う。というか読める心は所詮表層で、もっと深いところから拾 い上げた言葉にもなっていないものをつなぎあわせて、それぞれが自分が取る手を決めたのだろうな。
(また多分追記します)