KANGEKI-LOG

観劇とか感激とか思考の吐き出しとか

【観賞記録】絵本美術館・森のおうち『猫だらけ絵本原画展』

 長野県安曇野市穂高有明の「絵本美術館・森のおうち」に両親と3人行きました。親子で美術館なんて記憶にある限り初めて(!)。
 森のおうちは、その名の通り森の中にある小さな美術館。洋館風の佇まいが愛らしく、館長さんやスタッフさんが来館者をとても温かく迎えてくれます。個人的にも何回も足を運んでいる、安曇野観光超絶おすすめスポット。

\まずこの佇まいにめっちゃ癒やされる/

 そして同館のオススメポイントは何より…「絵本を本文とともに丸ごと原画で楽しめる」ところ!

 各企画展では原則、展示対象の絵本の挿絵原画全てが、本文(キャプション)を添えて飾られています。ぐるっと順路に従って一回りすると、1冊の本を楽しめる趣向。絵だけでなく、物語を楽しめる。絵本の世界に没入できる。これがとても良いです。

 「絵本を読みたいなら絵本を読めば良いじゃない」と思われるかも知れませんが、違う。「原画」は「印刷された本の絵」とは全く違う

 カンバスや絵の具の凹凸、製本後にはすっかり隠されている修正の跡、文字が入れられる部分の余白、印刷の時には切られてしまう端の描き込み――情報量が凄まじいんです。絵に向き合う描き手の息づかいがあちこちから感じられる。あと、絵本は印刷の際に原画から色合いが結構変わってたりする(その意図を考えるのもまた、楽しい)。

\開催中の企画展はこちら/

 この企画展では、4冊の絵本を堪能できます。

《企画展》町田尚子の猫だらけ絵本原画展
『なまえのないねこ』竹下文子/文 町田尚子/絵 (小峰書店)
『ネコヅメのよる』町田尚子/文・絵 (WAVE出版)
『ねことねこ』町田尚子/文・絵 (こぐま社)
《同時開催》江口みつおき絵本原画展
『変身ミーちゃんとおともだち』江口みつおき/文・絵 英訳/江口信男 (銀の鈴社)

 町田尚子さんの作品はなんと言っても猫の表情・仕草がたまらなく「猫」!。ちょっとふてぶてしい感じとか、つんとすました感じとか、そして何より、どの猫ちゃんもみんな違う個性があって、愛らしい。描き手の愛情とこだわりを感じます。

 インスタのイラストは人間っぽい(ファンタジー的な)猫が多いのですが、今回展示されているのは動物感あふれる猫という印象です。

 特に好きなのは『なまえのないねこ』。

なまえのないねこ|数ページ読める|絵本ナビ : 竹下 文子,町田尚子 みんなの声・通販 なまえのないねこ、竹下 文子,町田尚子:1700万人が利用する絵本情報サイト、みんなの声16件、よかった♪:新刊絵本紹介メ www.ehonnavi.net
靴屋のネコは「レオ」、本屋のネコは「げんた」、八百屋のネコは「チビ」。町のネコにはみんな名前がついているのに、このネコには名前がありません。
お寺のネコ「じゅげむ」に「じぶんで つければ いいじゃない。じぶんの すきな なまえをさ」と言われて、町を歩きながら自分に合う名前を探しはじめます。

 母と私はラストでちょっと鼻がつーんとしてました(涙腺の弱い親子)。
 そして、父(芸術に関する情緒は小学生)が楽しんでいた様子だったのは江口みつおきさんの『変身ミーちゃんとおともだち』。このお話も可愛いんですよ…。

 老夫婦に拾われた猫の正体は化け狐で…という筋書きなのですが、時々変身が解けてキツネのしっぽがでてきちゃうんです。猫以外にもとあるものに変身して読者を驚かせ、そしてラストには親子3人で「えー!でもいいね!」となりました。同館のある信州(長野)の玄蕃稲荷の伝説も絡んでいます。やわらかいタッチの絵柄に笑みがこぼれ、最後にはほっこりできる物語です。

 展示を巡る中で、母が「猫好きの人はすべての猫が好きて、犬好きの人は自分の犬が好き。だから展示ものは猫の方が人がよく集まるのよね」と言っていたのが印象的でした。確かにそうかもしれない。

\自慢の猫ちゃん募集されてます/

 1階の廊下に設置されたコルクボードに、「我が家の猫ちゃん」たちが集まり初めてました。ほっこり。あと2階の図書室にも入ったのですが、懐かしい絵本や児童書がたくさんあって、母と「これも読んだね」「あれも読んだね」と盛り上がりました…し、民話のコーナーに千葉県の実家&地元近くの民話を集めた本があって驚き。母が写メってました。笑
 帰りがけにはミュージアムショップで、私と母で絵本を2冊と、父は猫の絵がプリントされた眼鏡拭きをお土産に。温かく送り出していただきました。

 今回は立ち寄りませんでしたが、館内のカフェ「ポラーノ」もオススメです。メニューを眺めると「山猫コック長おすすめ珈琲」「注文の多いカレーライス」「雨ニモマケズとまとごはん」…そう、館長さんは筋金入りの宮澤賢治ファン(&研究者)!度々賢治作品関係の展示もされていて、館長さんの濃~い解説がたまらないのです。

 小さな美術館ですが没入してしまうと本当にあっという間に半日過ごせてしまうような空間です。周辺にはカフェやギャラリー、作家さんの工房もたくさん。私はこの、自然と文化が穏やかに寄り添い合っている安曇野の空気が大好きです。

 そしてコロナ禍で観光業が大打撃を受ける中、森のおうちさんも例外ではありません。「応援団」を募り、宿泊券(コテージがあるのです。レトロでかわいい!)補助券と合わせたご支援を受け付けてます。あと絵本や原画の通販もされてます~ぜひぜひ。私もささやかではありますが「応援団」の一員です。

[森のおうちNews] 絵本美術館存続のための御支援のお願い www.morinoouchi.com

  そして今回、補助券とGOTOを併用してコテージに宿泊したのですが、地域共通クーポンまで付いておやすさに目玉飛び出るかと思いました…(部屋料金なので、3人で実質1万円程度でした…)。

 いわゆる趣味仲間での「合宿」にも向いているのではなかろうか。今度は友人連れて行きます。大好き。

 『猫だらけ』企画展は来年1月26日まで開催中です!