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【観劇記録】『星降る街』

朗読劇「星降る街」、情報解禁! | De-LIGHT朗読劇「星降る街」【日時】2020年7月7日(火)〜13日(月)全12回公演 【あらすじ】七夕目前、「神様が棲む」と言われdelight-act.com
あらすじ
七夕目前、「神様が棲む」と言われる地方の街。
そこで生まれ育った和彦は、昔から一緒に過ごした友人に突然、記憶を忘れられてしまう。記憶喪失を疑った和彦は、幼馴染である詩織たちと共に記憶を思い出させようとするが、一向に戻らない。
それどころか、和彦に関する記憶の喪失者はさらに増えてゆく。
和彦のまわりで一体何が起きているのかー?
大切な誰かの悲しみを打ち消そうと起こした波紋は、より多くの人々の悲しみを想起させ、人間の生きる希望と喜びを浮き彫りにしてゆく。

ストレートな脚本・台詞運びの物語で、だからこそ終盤の役者さんたちの感情が爆発するような表情や声音に心が持って行かれました。舞台は「地方の街」になってますが「おやき」と「野沢菜」が台詞で出てきたので、多分信州だと思います(信州民)。

メインの幼馴染5人は男3人女2人の構成。私が観た回はその全員を女性の役者さんが演じていました。ストレートな話だけに、女性が演じる男性(少年、青年)特有の濁りのなさというかまっすぐさみたいなものがぴったりと噛み合っていたと思います。10年以上一緒にいた幼馴染たちが、進路やとある事情から離れたりどこかちぐはぐになっていく。けれど一つの願いが、紆余曲折ありながら5人をつくろいなおして行く…そんな物語でした。

朗読劇なのもあって、動きは少ないです。それもあって、私は序盤(と物語の流れが読めて、場面の繰り返しがある)中盤、はちょっと集中力は途切れ気味でした(でも終盤で一気に引き込まれた)。一方、役者さん同士が距離は離れていてもシンクロした動きや掛け合いを見せてくれたりする様子や、その時のしっかり表情まで観られるのは本当に配信の特権だと感じました。生の劇場では席によっては全く表情がわからないことも多々あるので…。

声優の名塚佳織さんが「語り」で出演していらっしゃるのですが、語り手の役どころ役作りが意外で「おおっ」となったり、など。それぞれ男性を演じる、和彦役・生田輝さんはまさに幼馴染5人の中心にいるにふさわしいカラッとした好青年、洋平役・遠藤三貴さんは少し子供っぽくてお調子者だけれどもみんなをしっかりと繋ぐ三枚目、裕人役・永瀬千裕さんは一歩引いてみんなを見てるけど思いやり深い二枚目(脳内)といった雰囲気で、それぞれの個性が際立っていました。真央役の山口立花子さんは、みんなが大切だから特に心配したり、不安がったりするなかで、川ではしゃぐシーンがあまりにもいとけなく可愛らしくて「真央…」となりました。
そして。物語のキーとなる詩織役・富田麻帆さんは、終盤の爆発力が凄まじいです。詩織の和彦への想い、幼馴染みんなへの想い、願いを全身全霊で演じる(というかもう憑依して変化してる)シーンを観るだけでも「観てよかった」と思わされます。本当に。

生配信朗読劇で15日までアーカイブを閲覧できる仕様です。
7月13日まで、キャストさんが入れ替わりながら上演されています。7月の七夕の時期に観るのにふさわしい、少し切なくてけれどもまっすぐでいとおしい物語でした!あ、キャストさんのアフタートークもとっても楽しかったです…!


*memo*
脚本・演出:吉田武寛
音響:DISCOLOR company
演出助手:加治幸太
衣装:小倉真樹
宣伝ヘアメイク:madoka
制作:秋山良介
プロデューサー:夏樹弘
11日マチネ・和彦:生田輝/詩織:富田麻帆/洋平:遠藤三貴/裕人:永瀬千裕/真央:山口立花子/語り:名塚佳織
公式Twitter


以下個人的なネタバレ感想メモ(箇条書き)

・青年役の生田輝さん(追いかけてる役者さん)があまりにかっこよくて目が焼かれてしまいました。あと男性役3人が演技中は足を開いて座ってるところとか細かいところの所作がすごく好き。
・和彦は自分が死んでいるとわかったあとも、どこか落ち着いていて、1番に遺される人たちのことを考えるところが好きだなあとなりました。あるいは彼自身もどこか早い時点で、気が付いていたのかもしれない。
・真央は和彦のことが好きだったのかなあ…と考えつつ(「付き合ってたの?」とあの場面で聞くのはいろんな意味にとれるなと。そしてそれが真央にとっての「後悔」だったんだな…)、幼馴染の絶妙な均衡を崩すのって怖いよねとしみじみする(が私にはそんな経験はない)。
・全員が白い衣装なの清潔感があって(あとどことなく現実感が薄れる感じが)好きでした。背景と同化させないためでもあったのかな。
・麻帆さん鼻水でるまで全身全霊で、それを拭うこともなく最後駆け抜けていく姿、見ているときは麻帆さんであることを忘れてました。本当に詩織だった。
・和彦と詩織はまさに「彦星」「織姫」からの名付けなのだろうな。喪失の後、遺された人には「会いたい」と「いっそ忘れてしまいたい」が表裏一体にある。最後の流れ星を見るシーンは美しくてあまりに切なくて、でも未来に向かって和彦が道を開いて背中を押すみたいな感じが、もう、もう…となった。
・神木の存在が思っていた以上にファンタジーで、そこにちょっと私の中では没入を妨げられる部分があったんだけど、詩織と神木のつながりと、最後に未来へと繋がる芽を見つけるシーン(ここまで読めてはいたけれど)にほうっと息をついた。いきていく4人の未来に、ひかりがたくさんありますように。そしていつか、またふたりが巡り会いますように。