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【映画記録】ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ | 6月12日(金)全国順次ロードショー映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』6月12日(金)全国順次ロードショーwww.storyofmylife.jp

 最寄り映画館のレイト回、劇場貸し切り状態で観ました。
 ルイザ・メイ・オルコットの名作小説「若草物語(現代:Little Women)」を新たな視点で映画化した作品。ネット上に素晴らしいレビューがたくさんあるので、私はあくまでも私が感じたことのメモ書き、という感じです。多くの人に観てもらいたい映画であることは間違い在りません。ぜひぜひ。

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 四姉妹の、少女時代を描いた上巻を暖色、大人の厳しい現実を描く下巻を寒色のフィルム(という言い方で良いのかな…フィルター?画面?)で表現し、ジョ―を中心にしてふたつの色と時間軸を行ったり来たりして物語が進む。やわらかい西日のきんいろと、さえざえとした夜明けの青という印象で(不思議と陰鬱な空気はなく、心地良い)。映像がとてもやさしく、うつくしかった…。 

 前情報ほぼなしで劇場に向かい、知っている役者さんもメグ役のエマ・ワトソンさんだけ。鑑賞後に監督の他作品を観たいなと思って公式サイトへ。レディ・バード、観なくちゃ。

「女性がアーティストとして生きること、そして経済力を持つこと、それをスクリーン上で探求することは、今の自分を含む全ての女性にとって、極めて身近にあるテーマだと感じています」――グレタ・ガーウィグ監督

 映画の公式サイトに描かれた監督の言葉。私はあまり「女性監督」という言葉を使いたくないのだけれど、でも同じ女性として「この映画を届けてありがとう」と思う人はきっとたくさんいると思う。私もそう。二十代後半を一人で生計を立てて生きている自分が、今このときに出会えて良かったと思った映画でもありました。
 一方で、160年も前に描かれた物語の人間(女性)の苦悩が、ほぼほぼそのまま現代でも通じるってどうなんだ、と愕然としたのが正直な気持ち。素晴らしい映画だったからこそ、その絶望も大きい。つらい。そんな社会を構成する一人として、私はこれからどうすればいいんだろう…。

 でもでも。小説家の道を歩むジョ―、愛する人と慎ましいながらも温かい家庭を築くメグ、画家の道を諦めて家と自身のために(きっと愛もあるけど)結婚するエイミー、をどれも否定することなく描くまなざしは本当にあたたかくて、救いでした。ジョ―の選択もまた、実際に生きたジョ―、出版された物語に描かれた(結婚した)ジョ―、そして描かれるはずだった(一人で生きた)ジョ―、と枝分かれしていているのも、好きだったな。

「結婚だけが女性の幸せじゃない。だけど、たまらなく寂しいの」

 このジョ―の台詞(と同調する私自身)を、最後に生身のジョ―と物語のジョ―たちがすくい上げてくれた気がした。

 夭逝したピアノを愛するベスは、少女のままだったなということをぼんやり考えていました。亡くなった彼女を指す「天使」という言葉が台詞の字幕に出たけれど、天使=良い子だったから天に召された、っていうのは遺された人たちの願いなんだよなあって…かなしい…かなしい…。ベッドにいないベス、で分岐する暖色と寒色のシーン、泣いてしまった。というかベス関係は全部泣いてました…。そういえば何となく、色白の肌に血がさすあったかそうなほっぺの色の印象なのか、ベスは寒色の画面でも暖色のイメージがあります。それもまた「少女」の印象を強めているのかも知れない。

 ところで、私がかろうじて読んだことのある「若草物語」は、幼いころの家にあった世界名作劇場(ハウス世界名作劇場)を本にした挿絵つきの「愛の若草物語」だったのですが、これは第一部のなかのさらに一部、という感じだったので、映画の初っぱなでローリーがジョ―に振られたことが発覚して「そうなの!?!?」となっていました。笑 

 鼻を高くしようと鼻を摘まむエイミーだとか、ローレンス老とベスのピアノやスリッパのくだりだとか、金策のために自慢の髪を切る(そしてその後影ながら泣いてしまう)ジョ―だとか、しっかり者だけれどもロマンチストなメグだとか…そうそう、こういう物語だった、と随所で懐かしい記憶がよみがえってきてにこにこしました(しベス絡みはだいたい泣いてた)。ローレンス老…あまりにすてきおじいちゃん…そして娘とベス二人を喪ったことを思うと…。

 ジョ―とエイミーの関係が鮮烈でした。少女時代のエイミーが置いてけぼりにされた腹いせにジョ―の大切な原稿を焼くシーンだとか、髪を切って涙するジョ―に寄り添うのがエイミーだとか、小説家になったジョ―と画家になることを諦めたエイミーの対比や、ローリーとの絡みだとか…。ジョ―とベスの姉妹と言うよりも親子並みの深い深い愛の繋がりも大好きなんですけど、ジョ―とエイミーの触れあったら火花が散りそうな、でもどこまでも互いを認め合っている(そして憧れ合ってもいる)ような…そんな空気感が好きでした。そこはかとなく妖精っぽい雰囲気と苛烈さを持ち合わせるジョ―役=シアーシャ・ローナンと、チャーミングなのに冴え冴えとした雰囲気のあるエイミー役=フローレンス・ピューも素敵だったな…。メグ役をエマ・ワトソンが演じるのは、あまり芸能界の人たちに詳しくない私でも意味深に感じたというか、彼女だからこそ演じられた役だなと思いました。ベス役=エリザベス・スカンレンのやわらかな空気や表情、それでいて透明すぎない透明さ(ふわっとしたヴェールのような)感じも好きだった。

一方で、主題からずれるからあえて詳細は描かれていないとわかってはいても、四姉妹の父が黒人奴隷解放のため北軍の従軍牧師として出征したことなどをふっと考えたりもする。

なにひとつまとまってないので後々追記するかも知れない。パンフレットが劇場で買えなかったので取り寄せ中。楽しみ。

「女性は結婚するか死ぬかだ」
「女優になるか、売春宿の女将をやるか、それとも結婚してまともな人生をおくるか」

memo
レディ・バード」のグレタ・ガーウィグ監督とシアーシャ・ローナンが再タッグを組み、ルイザ・メイ・オルコットの名作小説「若草物語」を新たな視点で映画化。南北戦争時代に力強く生きるマーチ家の4姉妹が織りなす物語を、作家志望の次女ジョーを主人公にみずみずしいタッチで描く。しっかり者の長女メグ、活発で信念を曲げない次女ジョー、内気で繊細な三女ベス、人懐っこく頑固な末っ子エイミー。女性が表現者として成功することが難しい時代に、ジョーは作家になる夢を一途に追い続けていた。性別によって決められてしまう人生を乗り越えようと、思いを寄せる隣家の青年ローリーからのプロポーズにも応じず、自分が信じる道を突き進むジョーだったが……。ローリーを「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメ、長女メグを「美女と野獣」のエマ・ワトソン、末っ子エイミーを「ミッドサマー」のフローレンス・ピュー、4姉妹の母をローラ・ダーン、伯母をメリル・ストリープが演じるなど豪華キャストが集結。第92回アカデミー賞では作品賞はじめ計6部門でノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞した。
映画.com』より