KANGEKI-LOG

観劇とか感激とか思考の吐き出しとか

【観劇記録】ファラオの墓〜蛇王・スネフェル〜

U-NEXTで配信中の作品。原作は未読。ハロプロ所属のタレントでつくる「演劇女子部」さんの作品もこれで3作目。古代エジプトを舞台にした架空大河ロマン(戦記)です。2時間とは思えない濃さでした…!

あらすじ
強国・ウルジナの若き暴君スネフェルは全エジプト制覇の野望を抱き、次々と戦をしかけ国の領土を広げていた。一方、ウルジナに滅ぼされた小国の王子サリオキスは奴隷として落ち延び、のちに対ウルジナ勢力をまとめる「砂漠の鷹」として反旗を翻す。
サリオキスと生き別れた妹姫・ナイルキアはウルジナの神官の養女となっていた。スネフェルは森でナイルキアと出会いそれぞれお互いの名も身分も知らないまま惹かれあっていく。

まず目を引くのは絢爛豪華な衣装!特に王族の服や冠、腕輪が照明を弾いて、息をする胸の上下だけでもめっちゃキラッキラ光る…きれい…。ウルジナに反意を抱くムーラ族の衣装は野性味のある盗賊風で、これもまたいい。もちろん楽曲やダンスもオリエンタル。あと、見所といえば殺陣!なんとなく前2作の鑑賞で劇女さんは殺陣やらないのかなぁと感じていたのですが、ガッチガチにやってました。めっちゃ迫力あります。

おそらく原作ではサリオキスが主人公ポジだと思うのですが、タイトルの通り敵ポジの「蛇王・スネフェル」を中心に据えた構成です。冷酷暴虐の王が愛を知っていく物語…と書けばとても良い響きなのですが、彼には信用できる人も臣下もおらず、愛した人は敵国の王女なんですね…。

人を嘲笑い、煽り、殺す、冷酷非情の王・スネフェル役は、「続・11人いる!」で好青年(タダとフォース)を演じていた石田亜佑美さん。カッと目を見開いて顎を少しあげる動作や、目を細めて口の端だけで笑う表情、あまりにも「王」…。それでいて、愛を知らない孤独と乾き、内側に固く鎖された繊細で無垢な心も場面場面で感じさせられる。

小田さくらさん演じるナイルキアは可愛らしい(けれどよく通る)お声と歌唱が素敵。可憐なだけでなく、聡明で気高い。「幸せとは何か」を語る彼女の言葉一つ一つが、乾いた砂漠に雨が落ちるようにスネフェルに沁みていくのがとても良い…。

サリオキスは、話の流れとしてはあくまでも反乱の旗頭として担ぎ上げられる流れを描いている(内面の描写は少なめ)といった印象なのですが、スエフェル役・石田亜佑美さんと、サリオキス役・加賀楓さんは、そこはかとなくお顔立ちというか雰囲気が似通ってる(気がする)んですよね。それが、サリオキス側に深い掘り下げがなくとも、彼らが対であり、鏡写しの存在であるかのように見せる。

各役の印象は下のネタバレ感想でまただーっと語るとして。殺陣と人間ドラマ、ドラマティックな起承転結にずっと目が釘付けでした。でも彼らの「物語」すら歴史という大河の一瞬にすぎないと括られるところまで含めて好き。初演の方もいつか観てみたいな。


*memo*
スネフェル:石田亜佑美/サリオキス:加賀楓
ナイルキア小田さくら/アンケスエン:牧野真莉愛
トキ:譜久村聖/イザイ:野中美希
アリ:森戸知沙希/パビ:羽賀朱音
ネルラ:飯窪春菜/ルー:横山玲奈
マリタ:生田衣梨奈/ジク:佐藤優樹
メネプ神官:清水佐紀/ケス宰相:扇けい
メリエト皇太后:汐月しゅう
【原作】竹宮惠子ファラオの墓』(小学館/中公文庫コミック版 刊)
【脚本】清水有生【演出】太田善也
【音楽】和田俊輔【振付】YOSHIKO
【殺陣指導】六本木康弘
【プロデューサー】丹羽多聞アンドリウ(BS-TBS)
【主催・企画・制作】BS-TBS / オデッセー


以下、初見ネタバレ箇条書き感想。
・野中さん、チュチュ姫演ってるときも勇ましい役似合うなあ…と思ってたけどイザイめっちゃかっこよかった。
・佐藤さんのジク…佐藤さん、トマノとかマーガレットとか、クセのある、良い意味でヨゴレや狂気のある役の演技が好き。「恐れながら申し上げます〜」からの下りの大げさで煽りまくりで楽しそうな感じたまらない。ヒャハハ!
生田衣梨奈さんのマリタの残忍な笑みがくせになるし、剣をふるう唯一の女性役でもあるので華があったな。
・譜久村さんは何の役してても存在感がすごいし、今回はある種語り手の立ち位置でもあって、要所要所で舞台を補足して締めてくれる。あと年若き女性への表現としては適切ではないかもだけれど「母」の立場が似合う方でもあるのだなあと。強さと包容力がある。
・スネフェルの母である皇太后役・汐月さん(元宝塚男役)は今回もとてもかっこいいし女性役も素敵…。譜久村さんとはまた違った王族としての「母」の役、よかったな…。スネフェルを愛したかったけれど愛せなかった苦しみ…。
・アンケスエン役・牧野真莉愛さんはまだ自分の中でも掴みきれていないんだけど、そこはかとなく超然とした役が似合いますよね。牧野さんのアンケスエンは姫というよりも巫女に近いようなイメージ。おそらくサリオキスとの関係は原作だと掘り下げられていたのだろうな。
・ルーが可愛い。ララララーってずっと聞いていたくなる。
愛する人一緒にいることが幸せだと語ったナイルが「あなたの剣で〜」って泣けるし、スネフェルの飾らない言葉と「ひとりぼっち」の孤独が「生きるのは辛いこと(でも生きるのだ)」という孤独がナイルを絶望から引き上げたことが改めて楽曲で語られるのほんと…。そしてこの2人のことはこの2人しか知らないんですよね。サリオキスも知らない。
スネフェル王、書面はよくよく読んでくれー!頼むー!!!!!(誰しもがあの場面で思ったに違いない)毒酒で思考力が鈍って� ��たのもあるんだろうな…。
・最終的にサリオキス王子が勝つわけだけれど、彼が治めた短い平穏と、愛を知り幸せな国について考え歩み始める道もあったスネフェルが王位につき続けたイフの未来、どちらが良きものだったのだろうかと考えさせられてしまう。
(また多分追記します)