KANGEKI-LOG

観劇とか感激とか思考の吐き出しとか

【観劇記録】『Play a Life』

あらすじ
高校の教育実習で担当教員に好きな映画を尋ねられて、ロビン・ウィリアムズの『今を生きる』と答える教育実習生。
彼女の答えは担当指導教員に昔を思い出させた。
ロビン・ウィリアムズのファンであった二人は、ロビンがアカデミー賞にノミネートされた時にロビンの映画特集をしていた名画座で出会い、恋をして、夫婦になった。
彼女は映画に憧れて教師に、彼は俳優を志した。
いつの間にか妻は教師を辞めて、彼は高校の非常勤講師を務めるようになっていた。そして二人の生活の間には1匹の猫。
ひょんなことから教育実習生の恩師が小学校の教師だった妻だとわかる。
何が夫婦の生活を変えたのか?妻が教師を辞めた理由は?夫が教師になった理由は?
“今を生きる”というテーマが物語の結末を導き出していく。

パソコンで視聴していたのもあり、最初は「歌がたくさんだ」くらいのかなり漠然とした気持ちで観ていました。その漠然の中に漂っていた違和感の原因があるシーンで歌とともに明かされた瞬間、涙腺が崩壊してしまって、そこからもうずっと泣いてしたし、画面から目が離せなかったです。配信最終日の、しかも夜に観たのは失敗だったな。歌詞が、セリフが、頭からこぼれ落ちていってしまう。私の馬鹿め。再演があるなら現場で観たい。でもこの涙腺の具合だとずっとすすり泣き状態で周りに迷惑がかかりそう…。

誰もが自分の世界を生きていて、でもその自分の世界には誰かの世界が溶けている。そして誰かの世界にも、私が溶けている。人生と人生が交わって溶け合って、過去に誰かに溶けていった自分や大切な人のかけらが、いつか自分をすくいにきたりするのかも、しれない。死後の世界でも来世でもなく、「現実」の「生」の一点に話が絞られているのが果てしなく良かったです。

岸さんの立ち上がった時の存在感に毎回「うおっ」となってました(座ってると熊さんみたいで可愛い…と思っていました)。暗闇のシーンは声だけなのに一番胸に刺さりました。彩吹さんは歌声が力強くて、でも微笑みは本当に優しくてやわらかくて、好きでした。平川さんは役も、お声も、演技も、存在が光で、架け橋でした。3人、そして1時間とすこしと少しという短い劇とは思えない。濃い時間でした。あ、舞台セットがとても好きでした。学校の机と椅子ってなんであんなにノスタルジックなんだ。猫ちゃんの世界にもあのひとは「いた」のかな。やさしい物語でした。

*memo*
出演 岸祐二 彩吹真央 平川めぐみ
演奏 key 小澤時史
スタッフ
作・演出 上田一豪/作曲 小澤時史
照明 岩下由治/音響 高橋秀雄/美術 柴田麻衣子
証明助手 有岡幸子/音響オペレート 水木さやか
舞台監督 佐野眞介
Web 相澤祥子/制作 椛島
プロデューサー 柴田麻衣子

劇団ホームページ:http://www.tiptap.jp/


以下個人的なネタバレ感想メモ(箇条書き)


・歌って言葉を超えて感情を伝えてくるのはなんでなんだろう。最初は「歌長いな…」くらいの感じだったのに。プロローグとエピローグを重ねてくる構成、王道だけど大好きすぎて死んでしまう。同じだけど同じじゃない、人は変化していくのだ。
・岸さん彩吹さんの掛け合いの歌で「私には見えない」「僕には見える(うろ覚え」で奥さんの死が明かされるの、そこに至るまでの違和感の落とし込み方といい鮮やかだったな
・猫を嫌いな奥さんが猫を助けて亡くなってしまう、そしてその猫はいま2人の家にいる(間接的に2人をつないでいる)の泣いてしまう。きっと奥さんはチョークケースの落書きがなくても猫を助けただろうけど、でも猫が「好きになれそう」と感じたあの心は真実で、教育実習生もまた、奥さんに変化を与えていたのだな。生徒も教師も関係ない。人と人との交わり。泣く。
・小学校教師だった奥さんの教え子が、奥さんの言葉で救われて、未来で奥さんの携えて旦那さんの前に現れるの、時間差の手紙のようであまりに愛おしいし、人が生きて人と関わって行くってこういうことなんだな、と思う。
・教育実習生の「霊が見える」発言、冷や冷やしたけど、安易に奥さんが見えるとか聞こえるの展開にならなくてよかった。最後まで奥さんが見えない存在なの、良かったな…。奥さんと教育実習生の噛み合ってない言葉が、でも2人の人生の交わりを通じて1本の糸に収束して真実になっていくの、震えたし、奥さんの人生を知っている旦那さんにとってもまごうことなく「真実」だと感じられただろう。
・旦那さんが「自分の世界で、奥さんが《いる》かぎり《いる》んだ」(意訳)って言葉、強がりであり芝居である一方で、これはもう本当だったんだと思う(ちょうど前の記事でそういう存在の話をしていたので、興味深かった)。私がいると感じるかぎりいるのだ。これは私の世界なのだから。