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【観劇記録】ネガポジポジ

演劇女子部さんの「ネガポジポジ」をU-NEXTで観ました!

演劇女子部「ネガポジポジ」 [DVD] www.amazon.co.jp 8,148円 (2020年08月26日 16:37時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する

アヤシゲなタイトル、やたらカラフル(で今風のセンスでも衣装でもない)服を着たキャストさんたちのサムネイル、配信されてるのに感想もあまり見かけない。どうやら調べたらハロプロ研修生さんが出てる舞台だそう。知名度やクオリティが低いのか?いやいやいや劇女作品だぞそんなはずない、ええいままよ!と見始めたら……めっっっっっっちゃ面白かった!

キャストを変えた3パターン上演(A・B・C)の作品で、1日1本ずつ見ました。動画再生時間330分になってるけど、1本はその3分の1だからブラウザバックしないでお願い。

クセの強めの脚本(+説明が少ない)と時代設定(バブル時代から世紀末近く)ですが、1本目(A)で大きくつまづかなければ、絶対に3本とも観て欲しい。なぜなら、筋書きも台詞も大きな変更はないのに、主役2人の関係&印象が公演3パターンで全く違うから!

主人公は、東京の片隅でせんべい屋を営む「万田(まんでん)家」4人姉妹の次女で、自分に自信がない「りさ」と、りさの同級生でお金持ち&おしゃれな「由美」。互いが相手に向けるのは、嫉妬か羨望か憧憬か憐憫かエトセトラエトセトラ×∞……この辺、公演パターンと観客の受け取り方で十人十色の答えがあると思うので、私はここでは断言しません(最下部では好き勝手語る)。観て確かめて

なお私は、最初にA公演を見終わった後「はわ…少女と少女の執着と衝突、成長のコイ(濃い/乞い/恋)物語じゃん…」と放心してしまった。Aが合わなくても、BかCにあなたの求めるものがきっとあると思います。私は全部好き!

あとこの舞台の魅力といえば…アンサンブル
黒くておしゃれな服を身にまとったアンサンブル(黒子)たちが、愛らしい動きで舞台装置を動かしたり、キャストさんと絡んだり、いたずらを仕掛けたり…とずっとにぎやかに舞台を(黒だけど)彩ります。電話が鳴ってキャストさんが取ろうとすると、黒子ちゃんが電話機持って逃げたりとか。可愛すぎる。
舞台のセットはシンプルなのですが、私はかなり好き。こたつや机や冷蔵庫をキャストさんが異動させたり、シャワーヘッドやのぼりといった小道具も面白い。

「まんでん屋」の、りさ以外の姉妹も良いですよ!

バブリーな雰囲気と高いテンションを併せ持つ長女のみちを演じるのは、劇女のプレイングマネージャー須藤茉麻さん!(元ハロプロアイドルなのをやっと最近知った)。3パターンある公演全てに出演する体力気力、そしてそれぞれの舞台にぴったりハマる演技、本当にすごい。し、みちの存在によってあの時代の再現性が増してる…と思ったらバブル崩壊後に生まれた同い年の方だった。役者さんってやっぱりすごい!

三女のまい、四女のるみもキャストさんによって結構雰囲気が変わってます。大まかには、まいはマイペースな中間子、るみはしっかりものの末っ子、という雰囲気かな。

母親・和子役の梨木智香さんも全公演に出演。女手一つで4姉妹を育てる、ひょうひょうとしていながら芯のある母親という印象でした(るみの友人である川上君とのやりとりが好き)。

ここまでざーっと書き連ねましたが、当時の時事ネタが結構散りばめられているのも楽しかったです。「?」ってなった部分には大抵元ネタがある感じ。こちらのブログが細かく解説してくれているのでおすすめです(1公演以上観た後が良いと思う)。

「ネガポジポジ」の設定と元ネタをゆとり世代がまとめてみた - 愛を確認しちゃう みなさん、「ネガポジポジ」観ましたか? ネガポジポジ、最高でしたね。 観られなかった方は、ぜひDVDで。公演は3パターンあ pep-rep.hatenablog.com

物語は、年月を空けた3回の「大晦日」が舞台になっています。最初の大晦日、舞台の幕開けは昭和63年。父が出張中という由美がまんでん家に泊まりにきたところから。独特な空気感の時代と「彼女たちのいびつな成長や衰退を、「家族」のいる場所から綴っていくヘンテコオペレッタ(公式より)」、是非堪能してください!

*memo*
《チームA》
キャスト:山岸理子加賀楓、堀江葵月、金津美月、清野桃々姫
アンサンブル:小野瑞歩、高瀬くるみ、前田こころ、川村文乃横山玲奈吉田真理恵、西田汐里
《チームB》
キャスト:高瀬くるみ、小野瑞歩、前田こころ、吉田真理恵、小野田暖優(演劇女子部)
アンサンブル:小片リサ浅倉樹々一岡伶奈、小野琴己、川村文乃横山玲奈、西田汐里
《チームC》
キャスト:小片リサ浅倉樹々一岡伶奈、小野琴己、西田汐里
アンサンブル:山岸理子加賀楓、堀江葵月、清野桃々姫、川村文乃横山玲奈吉田真理恵

脚本・演出 江本純子/音楽 遠藤浩二
振付 中林舞/舞台監督 小野八着
美術 田中敏恵/照明 関口裕二
音響 百合山真人/歌唱指導 詩菜
演出助手 松倉良子/衣装 高木阿友子
ヘアメイク 吉野事務所/宣伝美術 twominutewarning
イラスト 早川世詩男/写真 大霧円
プロデューサー 丹羽多聞アンドリウ
主催・企画・制作 BS-TBS、オデッセー


以下初見ネタバレメモ(複数回見かえしたら印象も変わるかもなと思いつつ。
・冒頭、さりげなく歌の歌詞がプレコールというかまんでん家4姉妹の名前連呼で初見で気付いて笑ってしまった。最初なんの英語だよと思って一生懸命聞き取ろうとしてたよ。笑 みちりさまいるみ~。
・川上君はどのチームも可愛い。
・ソバの注文を忘れた由美を糾弾するときにシューベルト「魔王」が流れるのあまりにツボにハマりすぎて、どのパートも5回ずつくらい再生した。ぼそぼそみんなが喋ってるところも最高過ぎる。
・由美はおそらくは父親の命令で、地上げのためにまんでん家を燃やそうとしたんだよね。ソバの注文をしなかったのもイタリアンも全部計画的。
 バツが付けられた町内の地図
 地上げで引っ越した川上くん
 和子ママに再婚をちらつかせる由美父
 不自然な一斗缶の油(由美は天ぷらが作れない)
 とか、結構色々ヒントはあったな。
・演目でチームごとに大きく差異が見えたのは、1回目の大晦日の暗転して由美が1人現れるシーンと、2回目の大晦日の風呂上がりの由美とりさのやりとり(小道具の使い方)と、3回目の大晦日の追いかけっこ。
・うろ覚えだけど、「宇宙から見た国境の無い地球」と「こたつの下から見上げた蜘蛛の巣だらけの天井」は対応していて、「地球」「こたつ」は帰る場所(家)の象徴で、こたつから見上げた天井は宇宙と同等に美しかった、みたいなイメージなのかなっていうか、そういうイメージがわいた(とくにC)。

《Aチーム》
一番殴られたというか主役2人があまりにつよい。一番ネガポジ(反転)感があったのもAかなあ。強い「嫌い」は強い「好き」にもなってしまう。
加賀さんのりさは良い意味で垢抜けてない雰囲気がでていて、まさにコンプレックスの塊って感じ。あと外面と内面のオンオフの切り替えが、仕草とか声の感じとかで一番感じられたかも(全体的にめちゃくちゃ声が大きかったけど!笑 そこがいい!)。これも良い�� �味でなんですけど、一番頭が悪そうに…もとい、卑屈なくせにどこまでも愚直な感じが出ているので、なんかもうねー、とても愛おしくなってしまう。由美のことは明確に「嫌い」なんだけど、居なくなって心配して、気になって気にしてて、きっとずーっと考えてて、だからこそくるっと鮮やかに反転しちゃうんだよな…。終盤の「好き-!」があまりにずるい。
山岸さんの由美は、自覚なく周りを振り回している小悪魔。高飛車と言うよりもナチュラルに他人を見下しているというか、そこに自分の判断がない(当然という)雰囲気。でも決して馬鹿では亡くて、暗闇に現れたときの雰囲気は蒼白で、虚空を見つめてる感じは、なんだろうな、静かに絶望していた気がした。姿を消した後もずっと罪悪感を抱えていた子のような気がします。中盤のソロ歌唱は艶っぽさと湿っぽさがある。
りさの愚直さが、由美のかたくなに閉じていた部分を開いて内側を晒させたようなイメージ。Aの最後、りさの頬を両手で包んで見下ろす由美の美しいことよ。そこからの額あわせの「ごめんね」さ…あのさあ…あのよお…よかったねえ…。「本当のことしか言わない」の歌唱ふたりともぐずっぐずで私もぐずぐずになった。
清野さんのるみが可愛かったなー!幼げなのに歌唱も堂々としていて、ちょっとおしゃまな感じが若草物語のエイミーみたいで。川上くんとの関係もちょっと甘酸っぱい。「男ってめんどくさ!」が好き。

《Bチーム》
Aとの差にびっくりした。特にラスト。
高瀬さんのリサは勝ち気。由美そのものというよりも彼女の立場(おしゃれができる財力)とかを羨んではいるけど、自分が負けてるとは思ってなさそうな印象。由美役小野さんとの身長差もあって、幼げにも見える。由美に対しての感覚は「ライバル」に近い印象だし、由美に由美らしくお嬢様で居て欲しかったのもこのりさなんじゃないかなあ、なんて。
小野さんの由美は(これも良い意味で)一番得体が知れない感じがした。無邪気な怪物…というと極端かも知れないけど、善悪の区別があまりないイメージというか。私は一番りさの家を明確に「燃やすか」となっていたのはBじゃないかなあと思ったりしている。放火するかしないかのシーンの時、Bはめちゃくちゃ周りを気にしていて、そこに決行の意志を感じてしまう。でもそこに別に「悪いこと」の意識はなくて「おっとうに言われたから」くらいのテンション、みたいな。だからりさともラストであそこまで無邪気に、さわやかに和解できるんじゃないかなあと。
最後の追いかけっこは、由美が追いかける側に回ったり、フェイクくをかけたりと変則的。印象的だったのは由美のかっぽう着(エプロンだっけ?)とかをりさがはいで投げ捨てていくところ。剥いていったのは自分の心か、相手の心か。そして余分なものを取り払って、この2人はからっと笑うのだ。

《Cチーム》
AとBを経てこの劇の見方がわかって臨んだC。
小片さんのリサは、由美との関係性によって一番成長したというか、「姉」っぽくなったなあと思いました。包容力がでたというか。終盤で興奮しすぎて細部の印象が飛んじゃっている…見かえしたい。
浅倉さんの由美は、素直になれない、寂しがり屋のうさぎのイメージ。Cを観ていてすごく感じたのは、由美の「母の不在/父以外の家族の不在」だったんですよね。Cにきてようやく(あ、由美も片親なんだな)と実感できたというか。個人的には明確に「まんでん家」に憧れていたように感じました。
天ぷら鍋を前にした暗転のシーンでは、やりたくないと拒否するように伏せて目を閉じる。ライターちかちかする数も一番少なかった気がする。とにかく、一番「したくない」を感じた。
そして私、中盤に閃くように「あ、この2人はきっと終盤の追いかけっこの末、正面から抱き合う。りさが由美を受け止める」って思ったんです。そしたら追いかけっこでまず、りさが先回りをするんですよ。逃げる由美の正面に回ろうとするの。そして最後にはりさが由美の手を引いて、りさの胸に由美が飛び込む。想像が現実になってて1人で奇声あげてしまった。これは私の妄想力がたくましいわけではなくて、舞台に、キャストさんの演技に、そう導かれたんですよ…。鳥肌立った。
これはAとBでその部分の演出が大きく異なっていたからこそ、「Cはどうなるんだろう」とCの由美りさの関係と行き着く先に想像を巡らせられたわけで。びっくりした…。ABであった、由美からりさへの「りさちゃんの方が私のこと好きでしょ」というカマかけが(でき)ないのも、「どのくらい好き?」って聞いて「お母さんくらい」って返されて「なんでお母くらいなのよ!」って怒っちゃうのも、あまりに「Cの由美じゃん…」と思いました。
あと小野(琴)さんのまいが個人的にめちゃくちゃツボでした。すさまじく棒に見える演技なのに、ハマりすぎているし、独特の間合 いとお声が好きすぎる。

今日でU-NEXTの無料トライアル期間が終わってしまうので円盤買おうか超絶迷っている。買うか…!!