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観劇とか感激とか思考の吐き出しとか

【観劇記録】『LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-』

U-NEXTで10月末まで配信している「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」を観ました。心のお肌がツヤツヤになりました

あらすじ
雨降る森のサナトリウム。吸血種の少女たちが療養するその施設で、シルベチカという少女が失踪を遂げる。友人であったリリーは消えたシルベチカの行方を探すが、サナトリウムの少女たちは誰もシルベチカを覚えていないという…

まず、少女(一部少年)たちの名前が全て花由来なのがストーリーもあいまって最高。少女たちが過ごすその箱庭ーーサナトリウム(劇中の名称は「クラン」)は体裁的には「学舎(ギムナジウム)」でもあるのがまた良い。

キャストさんが最高。私は初めて知ったのですが、キャストさんは全員ハロプロ所属のタレントさん。アイドルグループの方達なのかな(このへん本当に疎くて…)。歌が、画面越しでも観てる側の内側を直接揺さぶるような声量、迫力、情感で、震えました。ダンスもキレッキレ。カッコ良さも可愛さもぎゅうぎゅうに詰まっていて、生命力の塊を目の前にしているかのよう。精神的な不安定さと(この状態を繭期という)を抱える少女たちの危うさ脆さ、豹変、躁鬱の変化が、「演技」と感じさせず本物として舞台上で爆発していた。個性豊かな役柄で、すぐにキャラクターの顔と名前も一致したのも、キャストさんの力あってこそだと思います。一人一人お名前や出演作覚えたいな。

あとねあとね。衣装が最高。白を基調に黒の差し色、華美過ぎない、けれど可憐なフリルにレース。少女たちが舞うたびにふわりと舞うドレスの裾。たまりません。衣装の違いとかあとでじっくり分析したい。衣装の黒の割合とか、とあるキャラの非対称のケープとか、まじまじ観察し直したいです…。あと靴のかかとめっちゃ高いすごい。

舞台に衣装に色を着けるのが光(ライティング)であるのも最高。この世の物質そのものに色はない(光の透過度が違うだけ)、ということを改めて実感する。クランがある「雨の降りしきる森のあおみどり」が、人工の光でも表現できるのかと目を見張る。特に中央のライトが好き。目の前に人が立つことで隠れ、わずかに人がずれると(映像だと)一瞬環状のひかりがきらめくのにときめいてしまった。

「しんどい」「地獄」(共に褒め言葉)とTwitterのフォロワさんの中で名高い「TRUMP」シリーズの一作(私はまださわりしか知らない)なのですが、苦しい辛いよりも高揚感と快感の方が圧倒的に強くて、冒頭の通り観終わった後お肌がツヤツヤになった気持ちになりました。あと「イニシアチブ」という言葉を強烈に使いたくなります。「取ったわ、イニシアチブ!!!!」

シリーズ独自の設定がぽろぽろ出てくるのですが、いずれも丁寧に、けれど説明的過ぎずにテンポよく作中で解説してくれるので、初心者にも大変に大変に優しかったです。

結末だけを額面通りに捉えるなら「HAPPYEND」とは言いがたい作品ですが、私としては「観たい」と思う展開を、逃げずに真正面から、この上なく美しく凄絶に描ききってくれた(そして終わることのない、連続性を感じる)舞台、という印象でした。めちゃくちゃよかったです。サントラ付きDVD、買いました。これでいつでもお肌ツヤツヤになれるぞ!!(ネタバレ感想はmemoの下にあります)

ところで、「繭期」から連想されるのは白い繭だと思うのですが、白い繭をつくるお蚕さん(家蚕)は、習性的にはもはや「家畜」に近く、自ら逃げ出すこともしない/知らないし、自ら餌を探すことも敵から身を守ることもできず、人の手を借りなければ生きて行けない。林や野原に放してものたれ死にするだけ――ということを、作品を観ながら考えていました。
(一方で、家蚕として人に頼りきりで生きる蚕のほうが生存率が高かったから、結果そういう種が残ったって考えるとこれもまた、面白い)


*memo*(公式サイト
リリー:鞘師里保/スノウ:和田彩花
ファルス:工藤遥/マリーゴールド田村芽実
紫蘭福田花音/竜胆:譜久村聖
シルベチカ:小田さくら/キャメリア:中西香菜
チェリー:石田亜佑美/カトレア:竹内朱莉
ローズ:鈴木香音/ナスターシャム:勝田里奈
マーガレット:佐藤優樹/ジャスミン田辺奈菜美
クレマチス:加賀 楓/ミモザ佐々木莉佳子
Staff
脚本・演出:末満健一
音楽:和田俊輔
振付:YOSHIKO
プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ(BS-TBS)
主催・企画・制作:BS-TBS/オデッセー


以下個人的な初見ネタバレ感想メモ(箇条書き、追記すると思う)
・でてきた瞬間から監督生コンビ好きでした特に紫蘭ちゃん。二人が「親方様」に恭順してクランを維持してきたのは、お互いあってこそ(お互いを忘れたくなかった)の部分もあるのではないかなあと思うと泣ける。表立って後輩たちへの厳しい役を引き受ける紫蘭を、二人の時は竜胆が甘やかしてあげてほしいこれは妄想です。
・てっきりあらすじから「リリーとシルベチカ」の物語だと思っていたのに、どう見ても衣装の対というかセットが「リリーとスノウ」だったので気にしていたら、この二人の物語だった。二人の物語、といっても「親友」だったころの記憶を持っているのはスノウだけ(リリーもうっすら思い出してる描写はあったけど、完全に思い出したのかな…)っていうのが切ない。50年ほど前に記憶を保持できるようになったスノウが、誰とも深く関わらないことを選んだ気持ちを考えると胸が締め付けられます。元から物静かな子だったのかな。そうでない気もする。
マリーゴールド。ダンピールでありながら一番ヴァンプの「繭期」っぽい印象の子だったな。彼女から見れば手を差し伸べてくれたリリーは本当にひかりだったのだろう。そこはかとなくダウナーで猫背の時と、リリーのために行動する時の狂気めいた表情のギャップがたまらない。
・キャストさんの演技ももちろん素晴らしいんだけど、音響が結構すごいこと、ないでしょうか(いや詳しいことわからないけれど)。ささやき声すらよく通る(けれどうるさくない)あの感じ、音響の妙でもある気がする。
・ファルスは出てきた時から(こいつ全部知っとるやろ…)と思っていたらまさに中心人物だった。少年めいたお声、素なのでしょうか。作っているとしたら喉にすごく負担がかかりそう(でもすき)…と思っていたら、終盤哄笑と絶叫の嵐で「ひょえええええええ」ってなりました。凄まじい。すごい。リリーにすがりつく時の表情好きでしたし、すっと� ��情が冷めて「時間ならたくさんある」と笑みを浮かべるの、人離れしてて最高でした。
・彼がさって閉幕?そんな…と思ってたらリリーの不死が発覚して「うおおおおおお」とテンション爆上がりしてしまった(人でなしの自覚はある)。あれほど忌避し、友人たちを殺してまで阻止しようとした不死の道にふみ入ってしまったリリーは、彼のように壊れて人ならざるものとなるのか、あるいはまた違う壊れ方をしてしまうのか…これは続編とかで語られてたりするのでしょうか。リリーは本当に、心底、不憫(という言葉では足りない)なんだけど、私は蠱毒のごとく誕生した新たなる「TRUMP」に、歓喜してしまった。不死の孤独と不老の歪さを抱えて生きていく「少女」のいく末が見られるのを、残酷にも、心待ちにしている自分がいる。
・シルベチカがもっとも自分のことを忘れないでいてほしかったのは、彼女が愛したキャメリアだと思うのですが、リリーの記憶の中では彼女に宛てたことばでもあるように聞こえるのは、二人にどんな繋がりがあったのだろう。キャメリアがイニシアチブで記憶に蓋をされても「忘れてはいけないことを忘れている」とひたすらに思って、女子寮に通ってたの…泣いてしまう…。
・チェリー、叫んだりなんだりでめちゃくちゃうるさい(褒めてる)けど一番みんなのこと見て追っかけてあれこれしてるのにっこりしてしまう。匂い気にしちゃうところも可愛いし、勇気ある武闘派で笑ってしまった。飛び蹴り勇ましかったな…。
1時回ってしまった。また追記します!

追記
・最後にリリーの夢の中で去って行った少女達が一瞬の暗転で死んで倒れている配置に戻ってるのすごくないですか??毎回思うんですけど暗転したときの舞台上ってどうなってるの。すごい。あとオルゴールみたいにゆっくり回転する動作、めっちゃ好き…(グランギニョルのキャスパレもyoutubeで見たのですが、それにもあって「あー!すきー!ってなりました。笑)
・不老の解けたシルベチカには時が一気に戻って来た…ってことは、彼女たちの不老(永遠の少女)は表面のものであって、その奥底には流れる時がTRUMPの血によって隔離されているイメージ、なのかな。シルベチカは不老であることを拒否したけれど、愛するキャメリアには老いさらばえる自分を見られたくないっていうのがとても繊細で複雑だなあと思った。
・クランの少女達は老いない花=「造花(つくられた不老の吸血種)」なんですよね。でも元は生花でもあった…。人間?というか入学(入院)前はどうやって過ごしていたのだろう…その辺が二輪咲きで触れられてるのかな(ちょっと調べた)。
・繭期、私は所構わず突然少女達が豹変してバトルロイヤルが勃発するくらいの不安定さだと思っていたので、比較的真っ当というかどちらかというと、不安定な内側の発露・爆発と言うよりも精神的の欠損による虚無・沈静みたいなイメージ。
・カトレアたち仲良し3人組可愛かったしマーガレットと親衛隊も可愛かった。でも彼女たちこそ、記憶を喪ってもひたすらに同じ道・思考をたどっている気がして、それは本当に彼女たちの意志なのか?と不安にもなる。
・ファルス=昼顔(False bindweed)って言うのがぱっと浮かばなかったので英語の「false」が真っ先に浮かんでたんだけど、これって「True(of vamp)」に対する意趣返しの側面があるのね!
多分また追記するし2週目が見たい(中毒)